職場で上司に「裏切られた!」と思ったことはありませんか。
よくある話は、言われた通りに行動したのに、そんなことは指示していないと言われます。
また、失敗を部下の責任に押しつける等、上司が「保身」の目的で部下を裏切る場合です。
もう一つの「裏切られた」と感じるケースは、上司が組織を守る「立場」で行動する場合です。部下は実際に正しい判断をしたにも関わらず、否定されるケースです。
部下の判断は間違っていませんが、会社にとって深い意味合いがあり重要な判断が求められる場合です。
このように、上司に「裏切られた!」と思った時に、2つの違いがあることを知っておく必要があります。将来その判断を求められるときに必ず役に立つときがきます。
事例から学ぶ
上司に裏切られた!と思った事例
最初に一つの事例から考えましょう。私が若い係長時代の話しです。店舗のテナントを管理する立場の仕事でした。
あるテナントに料理の注文が入っていたのですが、テナントの責任者は発注を忘れていました。当日、顧客が料理の引き取りに来店したのですが、発注を忘れていたため渡すことができませんでした。
テナントの責任者はお詫びをしましたが、顧客は「他のお店に頼む」と言って荒立てずに帰りました。
テナントの責任者は、すぐに私のところへ報告に来ました。私は上司の課長に相談しましたが、「顧客が言っているのだから大丈夫だろう」との判断で、直接連絡をせず終わらせました。
翌日、突然上司の部長が私のところに来ました。その時、テナントの社長も同行していました。顧客の家族が直接テナントの社長に連絡していたのです。
私は部長から状況を聞かれ、事実をそのまま伝えました。すると部長は激怒し、私は「これ以上はない」怒られ方を受けました。
そのとき部長は、課長に「お前は知っていたのか?」と尋ねました。課長は「知りませんでした」と答えたのです。
私は、『えっ!? あの時報告をして指示を受けたじゃないか。なぜウソをつくのだ!』と思いました。
そのあと、課長からは「嘘をついた」という説明も詫びられることもなく、私は「裏切られた」と感じました。自分の「保身」のために責任を取らされたと思ったのです。
しかし、すぐに私にアドバイスしてくれる人がいました。その人は私に質問をしました。「もしあのとき、課長も知っていましたと答えたらどうなる?」と聞かれたのです。私には答えられませんでした。
質問の説明は、
②会社が仲間をかばう行動は信頼を失う。
③会社としての姿勢をテナントの社長に示す必要があった。
と言われ、課長が私に何も説明をしなかった理由は、
②課長は部長の考えをわかっていたので、嘘をつかざるを得なかった。
と説明を受け、「部長も事実はわかっていたはずだ」と言いました。
私は、「裏切られた」という気持ちはなくなり、むしろ安心しました。
その後、課長とはいつも通りの関係を保つことができ、部長からは一切の「おとがめ」はありませんでした
失敗の原因はひとつだけ
今回の失敗の原因はひとつ、「心の隙」です。自分で確認せずに、人の説明に安心しようとする「心の隙」があったからです。
人を信用しないという意味ではありません。自分で確認していない甘さなのです。
人に仕事の責任転嫁はできません。だからこそ、自分の確認が必要なのです。直接顧客に連絡し、お詫びと対処をしておけば状況は違っていたはずです。
この僅かなミスが大きな事故につながりました。結局、最悪のシナリオが予測されていなかったのです。
知っておきたい2つの理由は「立場と保身」
1.組織を守る「立場」
立場とは、その人の役割として行うべき行為です。今回の場合、部長の立場は会社の信頼を守り、取引先に対して姿勢を見せる役割がありました。課長の立場は、現場の「砦」として信頼を得る役割です。
そのために「嘘」は必要なのかという議論はあり、私のように内部の人間には理解・納得はできないこともあります。
しかし、内部の話しと対外的な外部の話しは意味が違います。部下に対する「嘘」は罪なことですが、対外的には「必要悪」になる場合があります。
2.自分を守る「保身」
保身は、個人的な願望や都合で行う行為です。自分の私利私欲のための欲望であり、この保身のために部下を裏切ったとすれば、上司としての資質はありません。従業員は長続きせず会社のレベルも向上しません。
この信頼関係を維持するためには、上司の資質と会社の厳格な姿勢が必要です。
上司の保身のために行われる部下への裏切り行為を、会社として容認すれば従業員の士気に影響しモラルの低下になるからです。
裏切りという言葉があります。
です。
良心の呵責(りょうしんのかしゃく)という言葉があります。
悪いとわかっていながら、やってしまい心の中で苦しむ罪悪感。
という意味です。
自分を守るための裏切りに心を痛めない人は、上司としての資格はありません。
組織は「正論」だけでは通用しない
正しい「正論」とは
会社や組織は「正論」だけでは通用しません。経営を守り会社を守らなければ、存続ができず従業員の雇用も守れないからです。
しかし、違法行為や責任転嫁で、ピンチを乗り切ることはやってはいけない行為です。法令順守と人道や人権を守ってこそ「実力」と言えます。
ここで言う「正論だけでは」とは何なのでしょう。今回のように問題の原因は相手であるテナント側にあります。「テナント側に責任がある」と言い切ってしまうと、テナント側は追い詰められてしまいます。
会社側の責任で納めることで、相手の立場を守り追い詰めない結果となり、相手は救われるのです。
会社が「恩を売った」と受け止められますが、そうではありません。会社側の非を認めることにより、互いの信頼関係を維持することができます。
勿論、会社側に非がなければこのようにはなりません。正しい正論とは、相手に原因があったとしても責任転嫁せず、自分の非を認める正義です。
アドバイスできる人が求められる
このようなレベルの内容は、高い立場にある人たちの話しで若い人たちには理解できません。
何の説明もなければ理解できず、犠牲や裏切りの意識しかもてず反感だけが残ります。若い人たちに説明できる立場の人が必要です。
今理解できなくても、将来その立場になれば理解しておかなければいけない問題もあります。正しく説明しアドバイスできる人がいれば、このような経験は大きな力に変わります。
「上司に裏切られた」と思い込むのと、「立場」と「保身」を理解するのでは部下の将来は大きく変わります。
まとめ
組織の中では「上司に裏切られた!」と思うことがあります。単に上司の身勝手な「保身」と、会社としての「立場」で起きる違いは、意味が全く異なります。
ほとんどの場合は、身勝手な「保身」です。しかし、会社としての「立場」の場合は、重く深い意味があります。
そして、知っておけば将来の大きな経験になります。特に若い人たちには、説明する責任が求められます。
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