クレーム対応の難しい判断、顧客の要望はどこまで聞けるのか

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クレーム対応で悩む担当者の方も多いと思います。謝って済む場合とそうではない場合があります。

思いも寄らない展開になると、即答できず解決に長引き、余計にこじれる結果に成り兼ねません。担当者としては、できる限り最初の顧客接点で解決したいと考えます。

しかし、顧客の要望はどこまで聞いていいのでしょうか。
また、何を基準にどのように断ればいいのでしょう。

要望を聞ける範囲には限界があります。対応を間違えると会社の姿勢と社会的責任が問われます。クレーム対応には、「誠意をもって、できる限りのことをする」考え方が必要です。

今回の【事例】は、買った果物から虫(幼虫)がでてきたクレーム事例です。

お客様は食べる前に気づいたので、食べてはいません。お詫びと返金で済めば良かったのですが、気分が悪くなったので、薬局で薬を買ってきて欲しいと頼まれました。

予測もしなかった要望でしたが、私はお断りをしました。勿論、理由があったからです。しかし、数日後にまたまた予測もしないことが・・・。

 

クレーム事例から学ぶ

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気分が悪い!薬を買って欲しいと言われたら?

売場で果物の「ヤマモモ」を買った顧客の話しです。

買って家で食べようと、ヤマモモを水で洗っているときに、白く細い虫の幼虫がでてきました。顧客はビックリし、店に連絡をしたのです。

私はすぐに顧客の家に訪問し事情を伺い、白く細い幼虫の説明とお詫びをしました。

この幼虫は、ショウジョウバエの幼虫でした。産地では、虫を駆除するために薬や燻蒸で出荷前に駆除するのですが、結果としては駆除できていなかったのです。

説明は理解してもらえたのですが、

「幼虫を見て気分が悪くなったので薬局で薬を買ってほしい」と言われたのです。

私はお断りしました。
「気分が悪いのであれば、病院で診察を受けて欲しい」とお願いしました。
「勿論、医療費はお支払いします」と説明したのです。

顧客からは、「なぜ、薬を買ってくれない」と問われましたが、「医療に関わる問題であれば、専門的な判断が必要であり病院で診察を受けて欲しい」と説明しました。

最後は、「もういい!」と言われ、私は返金とお詫びの粗菓を渡し帰りました。

私は、
①商品は販売者に問題がある。
②薬は医療に関わる問題であり、医師の判断で行う。
③市販の薬とはいえ、買った以上は責任がある。
④責任が取れない行為はするべきではない。
と、判断しました。

ところが数日後、新聞の「声」の欄に投書されたのです。「対応が悪い!」と書かれていたのです。

新聞記事には、会社名も名前も顧客の名前も無記名でした。私は会社に説明しました。会社からは一切の「おとがめ」はなく、理解を得られました。

 

顧客の要望はどこまで聞けるのか

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1.基本的な考え方

どこまで聞けるかの判断は、「顧客の権利」と認められる範囲です。「顧客の権利」とは、法的に認められる内容です。

しかし、クレーム対応最初から法律に基づいて対応しません。誠意で解決しない場合の最終手段です。

 

誠意をもって対応する。
しかし、「顧客の権利」を超える無理な要望は、会社として判断するべきことです。

 

2.返金や商品交換

購入した金額や商品に関することは、「顧客の権利」です。返金や商品交換を要望されれば、無理難題の申し出ではありません。快く応じましょう。

お詫びのときには、誠意の印として「粗菓」は必要です。これは「顧客の権利」ではありませんが、相手に誠意を伝える重要な手段として考えましょう。

 

3.交通費や治療費

クレームに関わる経費は、「顧客の権利」です。交通費を請求されれば、支払えばいいのです。但し、請求されればの話しです。普通は請求することはありません。

治療費も同様でが、事前に治療の状況や内容は把握しておきましょう。できれば、治療に関しては、こちらから進めるべきです。

 

4.働けない期間の保証

顧客の収入に関わる重要な問題で、「顧客の権利」です。医師の診断書か、会社の証明書が手続き上必要な場合があります。会社の保険対応になるからです。

相手が会社を休む場合は、大きな事故や食中毒です。この場合は、会社の「立場のある人」が対応しなければいけません。

 

5.精神的損害賠償

顧客にはクレームに対する「精神的損害賠償」を請求する権利があります。例えば今回、巨額な金額を請求されると対応できるでしょうか。

まず、クレームの内容が直接の原因であるかの正当性が問われます。そして、金額の根拠に妥当性があるかです。

精神的損害賠償は権利としてありますが、普通は請求されません。よほど「貰えるものは貰う」という考え方です。しかし、会社の対応が悪く、その責任として請求される場合があります。誠意をもって対応しておきましょう。

 

今回の場合、クレームの原因は商品の幼虫であり、会社の販売責任であり正当性はあります。

しかし、薬を買って渡すのは専門性に欠けます。
病院の判断の方には専門性があります。

その代わりに医療費を会社で負担するのは、当然の行為であり妥当性はあります。

 

聞けない要望の断り方

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できることを理論的に説明する

確かにクレーム対応は、顧客に納得と理解を得ることで解決します。しかし、理解と納得を得るために「何をしてもいい」は間違いです。

会社にはルールがあり、「できる・できない」があるからです。できないことは、「顧客の権利」ではないことです。

できることは誠意をもって説明すれば、普通は理解されます。

 

無理な要望は突き放す

ときには、無理な要望を求められることがあります。相手も無理とわかっていながら、こちらの対応を伺っているのです。

この場合は、前述したできることを理論的に説明すればいいのです。相手は、無理な請求は「脅迫罪」になることもわかっています。

 

それでも請求される場合は、突き放しましょう。
あとの対応は、会社か弁護士の仕事です。
担当者は、無理をせずできるところまでは責任をもって対応することです。

今回の事例でも、無理な要望を突き放しました。新聞に投書されましたが、会社からの「お咎め」はありませんでした。間違った判断ではなかったからです。

 

会社のルールに準ずる

クレーム対応の責任は、会社にあります。会社を代表して担当しています。だからこそ、責任を取れる範囲での対応が求められます。

責任を放棄するのではなく、専門的な分野を選択する責任があります。解決を急ぐための責任範囲を超えた判断は、無責任で決して適切であるとは言えません。

顧客にとって、安全で安心できる選択こそが、会社の社会的責任ではないでしょうか。

 

まとめ

クレーム対応で悩む人は多いと思います。私も苦労しました。解決できないと会社は「こんなこともできないのか!」と怒られることがあり、担当者は「何とか解決したい」と考えます。

解決することが優先すると、問題は更に大きくなります。

会社として顧客の要望には、対応できる限界があります。対応を間違え、限界を超えた対応には失敗する危険があります。すると、会社の姿勢と社会的責任が問われます。

クレーム対応には、「誠意をもって、できる限りのことをする」考え方が必要です。

それでも解決しない時は、会社の判断に任せましょう。判断を間違わなければ、担当者として「やるべきこと」はできているのです。

 

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